本学では薬剤師に必要な「知識、技能、態度」を修得するためのさまざまな実践的教育を行っています。それでは、この「知識、技能、態度」とはどのようなものでしょう。簡単な一例として、患者さんにお薬の効果や副作用を説明するときを考えてみます。病気やお薬の十分な「知識」が必要になりますね。また、患者さんにわかりやすく説明する「技能」、そして患者さんに接する医療人としての「態度」も必要になりますよね。このように考えると、薬剤師に必要な「知識、技能、態度」というのがわかりやすくなるのではないでしょうか。
さて、一例としてお薬の説明を挙げましたが、実は薬剤師の仕事はみなさんが想像できないくらい多岐にわたっています。患者さん用のお薬を調剤することはもちろん、患者さんの病状をモニタリングしたり、これまでのお薬の服用歴を管理したり、医師や看護師に情報提供したり、注射薬を混合したり、学校の環境衛生について検査したり・・・。もう数え切れません。そして、これらすべてに専門的な「知識・技能・態度」が必要となるのです。本学の医療薬学教育は、みなさんが新人薬剤師として医療現場で活躍するために必要なすべての「知識・技能・態度」を修得できることを目標としています。
本学では昭和57年の設立以来、十分な知識・技能・態度を修得した臨床薬剤師の養成に重点を置いてきました。これまで、医療現場からも高く評価されるさまざまな特色ある教育を実践しています。その特色は、「豊かな実績に基づいた医療現場との連携」、「ボランティアファカルティー」、「気づきの教育」、「豊かな人間性を養う教育」、「薬剤師アドバンスプログラム」、「医療現場や地域社会に密着した教育」に集約されます。
それでは、福山大学薬学部で行われている「医療薬学教育」について、その特色を以下に紹介します。
昭和57年、中国地方の私立大学で初めての薬学部として発足しました。薬学部4年制の当時から、①学内にモデル薬局(全国初の施設)を設置した事前学習、② それに引続き行う「必修科目としての病院・薬局実習」を全国で初めて実現させました。今の薬学部6年制では当たり前のことですが、この医療現場と連携した医療薬学教育を30年近く実践してきました。この間の卒業生は約4000名で、その数は中国地方随一です。実習協力病院・薬局には多くの先輩(ボランティアファカルティー)が働いていますので、病院・薬局実習も安心です。また、薬学部4年制時代では、近郊の基幹病院と連携をとり、大学院生の長期(4.5ヶ月間)病院研修を行ってきました。薬学部6年制では、病院実習を2.5ヶ月間行いますが、薬学部4年制の大学院生教育で培ったノウハウを生かして充実した実習を行う予定です。薬局実習については、広島県薬剤師会が開催する薬局実務実習指導薬剤師フォローアップ研修会等にも積極的に参画するなど、実習に対する連携体制を構築しています。その他、厚生労働省認定実務実習指導薬剤師養成ワークショップを毎年開催し、これまで270名以上の認定指導薬剤師ワークショップ修了者を輩出してきました。これらの活動は今後も継続していきます。

福山大学と広島県薬剤師会が共同で開催した薬局実務実習指導薬剤師フォローアップ研修会

福山大学薬学部には、3000名以上の卒業生がいます。その約半数は中国地方の病院や薬局で日夜患者さんの治療に取り組んでいます。ボランティアファカルティーとは、皆さんの学習をサポートしてくれる本学の卒業生(先輩薬剤師)です。本学では、教員だけでなく卒業生も先輩薬剤師としてみなさんをサポートします。5年次生の病院・薬局実習では、地域の病院や保険薬局で働いている先輩薬剤師がみなさんの心強い味方です。また、病院・薬局実習以外にも、ボランティアファカルティーは皆さんの学習をサポートします。1年生では先輩の職場を訪ねて医療人としての使命感と倫理観を体感しますし、高学年では医療現場での高度な知識と技能を学びます。

後輩を指導するボランティアファカルティー

これまでは、授業で話を聞いて、ノートをとって、覚えて・・・という受身の学習が多かったのではないでしょうか。福山大学ではこのような従来型の講義に加えて、「問題解決型」の学習方式の導入も推進しています。学生自身が問題点を抽出して(気づいて)、自己学習と少人数でのディスカッションを行いながら解決を目指します。つまり、「問題解決型」とは自ら能動的に学習するシステムです。この形式は、1年生の授業からいくつか取り入れられます。知識の習得はもとより、協調性、コミュニケーション能力、問題解決能力が飛躍的に向上するため、医療人を目指すみなさんには非常によい教育法です。
問題解決のために討論します(スモールグループディスカッション) 学生が、自分たちで気付いた問題点とその解決方法を発表します。
薬剤師は知識があるだけでは務まりません。ヒトの心がわかる豊かな人間性が必要です。本学では幼稚園、老人養護施設とも連携して、幼児や高齢者とのふれあいから「ヒトの心がわかるヒューマニズム教育」を実践しています。これは、幼児または高齢者と1:1のパートナーとなり、8回(2時間/1回)の交流を通してコミュニケーション能力を培うと同時に、他者に対する自己の役立ち感に気づいて、自己肯定感・自尊感情を育んでホスピタリティーを培うものです。また、ハンディキャップ体験、病院での看護体験等を通してヒトの心と医療について考えていきます。看護体験とは、病院で看護業務に従事する看護師と1:1のパートナーになって、日中の看護場面を体験し、生命の尊さや人の生きる権利について考え、医療に携わる人としての倫理観を醸成することを目的としています。自分が体験して初めてわかるヒトの心。みなさんも体験してみませんか。
高学年での一歩進んだ薬剤師養成専門プログラムです。薬学部での基本的な知識・技能・態度を修得した後、自分の興味にあった内容を選択してより理解を深めます。緩和医療、テーラーメイド、がん薬物療法、漢方、精神神経疾患治療など、さまざまなプログラムが用意されています。みなさんはどのプログラムを選びますか。
多くの教員は医療現場や地域社会と連携した活動を行っています。例えば職能団体では、広島県薬剤師会理事、広島県病院薬剤師会学術教育研修委員、近郊病院では治験審査委員、受託研究審査委員、倫理委員、地域医療支援病院委員、公立小中学校では学校薬剤師などを併任しています。難しい名前が並びましたが、本学の教員はこのような薬剤師に関わる地域社会活動に積極的に参加しています。また、広島県薬剤師会、福山市薬剤師会、広島県薬剤師研修協議会と協力して、イベントなどでお薬相談室の開催や健康に関するパネル展示を行っています。これらの活動は地域社会に貢献するためですが、同時に、大学教員が医療現場や地域住民から学ぶことも数多くあります。教員が大学の研究室に閉じこもったままでは医療薬学教育は実践できないと考えています。本学では、医療現場や地域社会から得られたリアルタイムの情報やニーズを教育にフィードバックすることを実践しています。

薬剤師会と連携した地域住民の意識調査と健康に関する情報発信


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